芸能人・スポーツ選手等の確定申告コラム

プロ野球選手の確定申告【詳細解説】

本日はプロ野球選手の確定申告についてご紹介いたします。

プロ野球選手は個人事業主として確定申告をする必要があるか?

プロ野球選手はそもそも個人事業主として確定申告をする必要があるのでしょうか?まずはこの点について検討を行う必要があります。プロ野球選手が確定申告を行う必要があるかどうかについては判断する場合には、以下の点について検討を行う必要があります。

(1)個人事業主としての事業所得が発生しているか?
(2)給与の年間収入金額が2,000万円を超えているか?
(3)給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超えているか?
(4)その他確定申告を行う必要がある一時所得や不動産所得などが発生しているか?

上記のいずれかに該当する場合には、プロ野球選手の皆様は確定申告を行うこととなります。

プロ野球選手が球団から受ける報酬は事業所得か?給与所得か?

上記のうち、特に重要な論点が(1)と(2)のあたりでしょう。すなわち、プロ野球選手が球団から受ける報酬については、個人事業主としての事業所得とされるのか、それとも給与所得とされるのかという点です。こちらについては現在は「事業所得」と解することが一般的となっております。過去には「職業野球選手の所得に関する個別通達(昭和26年直所2-82、直所5-23)」がありました。現在は実務上定着しているため、通達に規定する必要がないと考えられたのか当該通達は廃止されています。

【個別通達(昭和26年直所2-82、直所5-23)】
職業野球の選手の所得については、従来給与所得または事業所得として扱つてきたのであるが、最近における選手の所得の実体が(1)選手は球団の指定する野球試合に出場することを約し、これに対し球団から出場契約料、試合出場料の支払を受けるものであり、且つ、当該選手の技能の進歩または人気の高低に応じその出場料も増減せらるべき性質を有し、一般芸能人の出演契約と何等の差異が認められないこと、(2)試合出場に要する用具等は、特定のものを除きすべて選手の個人的負担であること等にかんがみ、昭和26年分以降の職業野球の選手の所得については、「すべて事業所得(サービス業)」として取り扱うこと。

ただし、プロ野球選手の二軍選手については、特定の球団の指揮下にあることを鑑みて場合により給与所得として解するケースがあるということについては留意が必要です。

プロ野球選手が球団から受ける契約金についてはどうする?

ドラフト1位で球団に入るプロ野球選手ですと契約金が「1億円!」というケースもあろうかと思います。日本の最高税率は約50%、1年で契約金をもらって半分税金で取られてしまうというのはさすがにつらいものです。契約金は収入の前払い的性格がありますので1年の所得とすることは合理的ではないのではないか・・・。その通りです。

そこで実は契約金については特別な課税上の取り扱いがあります。「平均課税方式」というもので、臨時・変動的な所得については5年分の所得が一時に実現したように考えていったん5で割り、その割った後の金額に累進税率をかけて税額を算定しその税額を5倍するという方式です。五分五乗方式ともいわれます。臨時所得等も含め収入が突然増加した場合や著しく変動する場合の調整措置です。

ぜひ、臨時の所得や著しく変動する所得があるプロ野球選手の方は、この「平均課税」の特例を利用することをおすすめいたします。

プロ野球選手が確定申告を行う場合の手順

これらの検討の結果、プロ野球選手の方に事業所得があるとなった場合には、確定申告を行う必要があります。プロ野球選手が確定申告を行う際の一般的な手順は以下の通りです。

(1)確定申告のための申告用紙を入手する

最初に最寄りの税務署または国税庁ホームページから確定申告書の用紙を入手することからスタートします。いろいろな用紙があってわかりずらいですが簡単に紹介しますと以下のような種類となっています。

確定申告書A
 主に給与所得者や年金所得者の確定申告書です。
 ⇒二軍選手の皆様で給与所得の方はこの確定申告書Aを利用する場合があります。

確定申告書B
 主に個人事業者や分離課税対象の所得がある人の確定申告書です。
 ⇒プロ野球選手の皆様は通常はこの確定申告書Bを入手することとなります。

分離課税用(確定申告書Bとセットで使用)
 土地建物等・株式等を譲渡した場合の所得(譲渡所得)や退職所得などがある人の確定申告書です。
 ⇒プロ野球選手の皆様で上記の所得がある場合にはこれも入手する必要があります。

損失申告用(確定申告書Bとセットで使用)
 所得金額が赤字になる人の確定申告書です。
 ⇒プロ野球選手の皆様で所得金額が赤字になることはあまり想定されないと思いますが、もし大きな必要経費がかかって赤字となる場合にはこの用紙を入手することとなります。

なお、最近は国税庁のウェブサイトである確定申告書作成コーナーからも確定申告書を作成することができますので、以前よりは確定申告書の用紙を入手して手書きで記載する方は少なくなっております。

(2)確定申告書を作成するための必要情報・必要書類を集める

 
プロ野球選手の方が確定申告を行うために必要となる情報や書類は、ケースバイケースなので一概には言えませんが、例えば以下のような書類が必要となります。
・球団等からの支払調書又は源泉徴収票
 ※支払調書は、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」という種類のものになります。
 ※講演会などを依頼されて受領した報酬についても支払調書を受け取ることとなりますが、こちらも申告が必要です。
・収入が入金されたり、必要経費が出金される通帳
 ※プライベート用口座と事業用口座は分けたほうが管理や説明が楽になります。
・必要経費の領収書や請求書等
 ※家賃や車両費や携帯電話料金など100%を必要経費にしずらいものについては経費算入した割合についての説明も必要です。
・各種控除のための証明書類(生命保険料控除証明書等)

プロ野球選手の皆様は、オフの12月~1月にかけて自主トレをしながらこれらの情報や書類を集めていらっしゃいます。日本は寒いのでグアム等暖かいところにトレーニングに行かれる方々もいらっしゃいます。この中で特に大変なのは、必要経費の領収書や請求書等を整理しEXCELにまとめる等の作業です。もちろん領収書ごと税理士に渡して確定申告をお願いするというプロ野球選手の方々も多いと思いますが、ご自身で行う場合には、親族や友人などの協力が不可欠かもしれません。

(3)確定申告書を作成する

必要な情報や書類が集まりましたら確定申告書を作成していきます。確定申告書には色々な明細を添付する必要があります。そして提出用と控え用と2部作成する必要があります。何かあった場合の確認や翌年以降に確定申告書を作成する上での参考となります。この作業は3月15日までに行うこととなります。

ここで白色申告と青色申告で作成する書類が一部異なってきます。白色申告の場合にはいくつかの税務上の恩恵は得られないが貸借対照表を作成する必要がなく経理処理が必要に楽です。一方で青色申告は事前に税務署に「所得税の青色申告承認申請手続」を提出することで、いくつかの恩恵を受けられますが貸借対照表を作成するなど作成する明細が多くなります。青色申告と白色申告の違いについては別の機会でご紹介させていただきます。

なお、日本のプロ野球シーズンのスタートは通常2月1日となっています。2月に入りますとキャンプが始まり2月末くらいまでトレーニングを行うことが一般的かと思います。2月下旬からは各チームとのオープン戦や紅白戦を行っています。公式戦開幕に備え準備をしている時期に自ら確定申告書を作成するというプロ野球選手の方にはお会いすることはあまりありませんが、イメージといたしましてはこの時期に確定申告書を作成していくこととなります。

(4)作成した確定申告書を税務署に提出する

作成した確定申告書は提出時の住所地を管轄する税務署に提出することとなります。なお、年の途中で引越した場合には、引越し後の住所を管轄する税務署に提出することになります。その場合には、引越し前の管轄税務署と、引越し後の管轄税務署の両方に忘れずに「納税地の異動に関する届出書」という書類を提出する必要があります。

確定申告は毎年対象となる年の翌年2月16日から3月15日までに行う必要があります。なお、所得税が還付されることとなる確定申告書の場合には、2月16日を待たずしてなんと1月1日からすぐに提出することができます。

提出方法としては、もちろん税務署に直接持参しても大丈夫ですが、郵送にて送ることも可能です。郵送の場合には控えと切手を貼った返信用封筒を同封することに忘れないようにします。なお郵送の際は消印有効ですので提出期限の最終日の消印がもらえれば期限内申告となります。期限後申告となりますとペナルティがあります。

(5)所得税の納付をしたり、または、還付を受ける

所得税の納期限は確定申告期限と同じ3月15日となっています。所得税の確定申告書を提出する際に、同時に納付書に金額を記載の上、税務署、銀行、郵便局、信用金庫等で納付をします。還付申告の場合には確定申告書を提出して1か月くらいしますと指定口座に還付されることとなります。なお還付申告の場合の指定口座はネット銀行の口座は対応していない場合があるので注意が必要です。

なお、住民税の納付については申告した所得税確定申告書をもとに5月までに決定され6月から納付を開始することとなります。したがって、住民税の巨額な納付書が突然自宅に届くということに備えてしっかりと納税資金を確保しておく必要があります。

確定申告においては「何をしたらいいんだろう?」「どんな書類を集めればいいのだろう?」「どうやって書けばいいのだろう?」と不安になることも多いと思います。確定申告についてお困りの際はお気軽にご相談下さい。ご自身でご自身のことを客観的に見つめ確定申告を行うことはとても難しいと思います。是非、弊社の経験豊富な税理士がお手伝いをさせていただければ光栄です。

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